イノベーションをチームで創出するには?

「ビジネスには、イノベーションが必要だ。常に新しいモノやコトを生み出さないと生き残っていけない」という考え方は、多くの企業で聞かれます。しかし、経営環境が厳しさを増す中で、現場は多忙を極めていて、新しいことに挑戦する余裕がないという声も多いかも知れません。 今抱えている仕事(オペレーション)と、イノベーション。はたして、どちらを取るべきなのでしょうか。

チームでイノベーションを起こす

オペレーションとイノベーション。

はたして、どちらを取るべきか、非常に悩ましい課題です。

どちらかと問われたら、「オペレーション」と答える方が圧倒的に多いかもしれません。しかし、経営陣の認識はどうでしょうか。オペレーションだけでは、成長が止まってしまいます。またこれを、効率化(オペレーション)と成長(イノベーション)のどちらを採りますか、と言い替えたならば、どちらか一方ではなく、両方欲しいとなるでしょう。

イノベーションを起こすのが、一人なのかチームなのか、という点も、重要な点です。人材開発では、個人の能力育成に重点が置かれがちです。しかし、個人の能力だけを育成していて、イノベーションを推進する人材が果たして創り出せるでしょうか。

強力な推進役がいないとイノベーションは起こせない、という考え方もありますが、視覚会議は「日本企業では、個人ではなくチームでイノベーションを起こせる」ことを前提にしています。チームでイノベーションを起こすためには、複数のメンバーが集まって自由に考える場が必要です。視覚会議ではその場を「創発の場」と呼びます。

「創発の場」作りを阻む2つの壁

創発の場が必要ならば、作ればいいのではないか――そう考えるのはとても簡単なことです。ところが実際には、多くの企業で場を作れていません。仮に作れたとしても、なかなか続かないのです。それには、理由があります。

ホンダの元経営企画部長の小林氏によると、「ホンダでは、業務の95%はオペレーションであり、イノベーションに割ける時間はわずか5%だ」といいます。常に新しいことに挑戦し続けているあのホンダですら、そうなのです。しかも、「何年もかけてイノベーションに時間と費用を費やしたとしても、その成功確率はわずか10%以下にすぎない」というのです(小林 三郎著 『ホンダ イノベーションの真髄』 2012年日経BP刊より)。

これまでは創発の場を作るために危機感を醸成し、まずはマインドセットを作ろうという動きがありました。もちろんマインドは必要ですが、それだけではうまくいきません。「創発の場」作りを阻む壁が、2つあるのです。

一つは「時間が取れない」、もう一つは「答えが出ない」というとても根本的なものです。

次に「答えがでない」です。たとえば、ワールドカフェをやった。関係者が集まって意見を出し合い、場は盛り上がったのだけれど、それで終わり。アクションプランや実際の行動につながる内容が出てこない。あるいは、議論をして結論はでたけれど、ありきたりの内容で、わざわざ集まるまでもなかった。結局この場は何だったのだろう……となるケースです。まず、オペレーションに追われて時間が取れないという壁があります。キーパーソンであればあるほど業務が集中し、多忙なものです。メンバー全員の時間調整が難しく、継続的に開催することが難しい。とても単純なことですが、創発の場を作りたい事務局(経営企画や人材開発、商品企画などの部門が担当)としては、入り口でひっかかりやすい頭の痛い問題です。

これらの2つの壁をいかに乗り越えるかが、継続して創発の場を作るのには、鍵となるようです。

「創発の場」作りに必要な3つの条件

当社では、創発の場を継続的に作り続けるには、3つの条件が必要だと考えています。

(1)チームでゴールを合意形成する
(2)会議実施の時間が短い
(3)自発的にやりたくなる解決策が創られる の3つです。

 条件の一つ目はまず、チームでゴールを合意形成するということです。

ゴールや目標を作る場合、過去の延長線上で考える「フォーキャスティング」も可能ではありますが、創発の場で議論を前に進めていくにはゼロベースで、あるべき姿やありたい姿を考えることが近道です。これが「バックキャスティング」です。

チームで議論をして、未来やゴールを「あるべき姿」として合意形成する。そのあるべき姿に向けて、具体的なアクションプランを検討する。参加者自身がゴールを設定するので、アクションプラン構築においても、高いモチベーションで議論することが可能です。

次に、時間です。昨今は会議の短縮化が言われているものの、現実には2時間から3時間の会議を繰り返しているケースも少なくないのではないでしょうか。

多忙な参加メンバーのことを考えれば、会議時間は短かいに越したことはありません。短時間なら気軽に参加できますし、繰り返し開催することもできます。一つの目安は1会議の所要時間を50分間から1時間にすること。これが、創発の場を継続するために不可欠です。

そして、参加者が自発的に実施したくなる解決策が創られることも重要です。このためには、問題解決のアプローチ自体を変える必要があります。

従来は目標に対して足りないところを考え、その不足を埋める「ギャップアプローチ」が主流でした。このアプローチでは、原因分析が不可欠です。論理的に分析し、解決方法も論理的に組み立てていきます。過去を分析し、ギャップを埋める問題解決法といえるかも知れません。

これに対して創発の場では、理想やあるべき姿を実現するためのアクションにフォーカスする「ポジティブアプローチ」が向いています。過去や現状は一旦置いておいて、あるべき姿の実現に向けた方法を考え、実現性や実効性に重点を置きます。結果として、現状の問題点も解決されてしまうという方法です。

あるべき姿やありたい姿を起点に、ゼロベースで考えるので、参加者の意識はおのずと未来志向になります。そのため、議論は常にポジティブで、出来上がったアイデア対してもモチベーション高く臨むことができます。

以上が「創発の場」作りに必要な3つの条件です。

これらの条件が満たされると、創発の場を継続して作ることができるだけでなく、短いサイクルで成果が出せるようになります。場に参加すること自体が面白くなり、メンバーのモチベーションもさらに上がります。だから、誰に言われるでもなくメンバーが集まり、自由に新しい解決策を生み出し続けることができます。好循環を通じて、新しいイノベーション組織の風土を醸成するのも夢ではないのです。

視覚会議BASICは創発の場作りに必要な3つの条件を満たすように設計されています。3つのプロセスを活用し、短時間での会議を実現する仕組みや仕掛けを用いることで、さまざまな組織で、理想的な創発の場を継続的に実現できます。

また、「ビジョンメイキング(ビジョン構築メソッド)」「アイディエーション(アイデア創発メソッド)」「ビジネスクリエイション(事業創造メソッド)」からなる視覚会議は、節目ごとに必ず視覚会議BASICを使って合意形成を行います。だからこそ参加者全員が納得しながら、新しい事業やプロジェクトに挑戦していくことができるのです。