POINT

多様なバックボーンを持つ社員の強みを活かしながら共創を目指すLIXIL。そのためにシックスシグマを活用する同社が感じる視覚会議の価値とは?

共創や協業をスムーズに、
社員の力を引き出す合意形成術

プロジェクトを前進させる推進力として

2011年に建材・設備機器メーカー5社の統合で誕生したLIXILでは、多様なバックボーンを持つ社員がそれぞれの強みを発揮しつつ、多彩な社員が出会ったからこそのコラボレーションが進むように、いろいろな試みがされています。その具体的な取り組みのひとつがシックスシグマ手法による問題解決(カイゼン活動)です。品質・EHS本部の原佳之さんの部署では、座学教育や問題解決を任されている社員のコーチングなど育成活動を行っています。

情報システム本部の多田浩子さんはシックスシグマの資格ブラックベルトを目指す一人。認定されるためには社内メンターのコーチングを受けながら、部門横断のプロジェクトを完遂するなど、一定水準の成果を上げなければなりません。

そのプロジェクトのテーマとして「ナレッジマネジメント活動の全社展開」に取り組んでいます。ナレッジマネジメント活動とは、部門を越えて従業員の知識(=ナレッジ)を共有し活用することで、社内の大切な知識を最大限に活かし、強い組織を創ることを目的とした自主参加型のボトムアップ活動です。

※ナレッジ……マニュアル、手順書、事例、ノウハウなど

ナレッジを企業力に結び付けるためには、参加者を増やし、投稿・参照のサイクルを回すことが重要ですが、周囲に「参加してください!投稿してください!」と呼びかけても簡単には集まりません。どうしたらこの活動を広げることができるのか、多田さんはコーチを務める原さんに相談しました。

「いまの多田さんのテーマに必要なものは“ナレッジマネジメント活動のビジョンを描くこと”だと思ったので、視覚会議を提案しました。普通ビジョンを作るには相当に時間がかかりますが、視覚会議ならば短時間でひとつの答えが出せますから、コアメンバー6人に集まってもらい、ナレッジマネジメント活動のあるべき姿について視覚会議を行いました」(原さん)

多田さんはこれが初めての視覚会議でしたが、「全員が同じような作文を書いたことにビックリ」したそうです。ここで合意形成したビジョンはメンバー間で共有され、プロジェクトを前進させる原動力となっています。

モヤモヤが簡単に解決できたことに驚き!

キッチン事業部の高橋努さんはブラックベルト認定者のひとりで、社内コーチとして活躍しています。視覚会議は原さんの紹介で知りました。
「初めて体験したときはキツネにつままれた気分でしたよ(笑)。だって、みんなが胸の中でモヤモヤと思っていたことが、わずか50分間で可視化されたんです。すごいと思いました」(高橋さん)

現在、高橋さんは必要に応じて、ファシリテーターとして視覚会議を行っています。多くの場合はプロジェクトやチームのあるべき姿がテーマですが、ちょっと変わったところではアイデアの整理に活用しました。

「将来の技術アイテムを考えていたのですが、技術と一口に言っても幅は広いですし、顧客ニーズも千差万別で、どこから手を付けていいのか悩ましい状況でした。そこで、『技術アイテムを考える際のあるべき姿とは』という少しひねったテーマで視覚会議を実施しました」(高橋さん)

視覚会議はアイデア出しのような発散系のテーマよりも、あるべき姿や理想の姿を合意形成するのに適した手法です。しかし、高橋さんのテーマ設定の工夫により「情報が整理され、可能性のありそうな方向性が見えてきた」(高橋さん)ことから、参加メンバーにも好評だったそうです。

未来を考え、ビジョンを作るのに最適な手法

LIXILにおける視覚会議の活用はまだ始まったばかり。原さんはシックスシグマとのバランスを考えながら、モノや仕事の品質の向上に寄与する仕組みを整えていきたいと考えています。

「シックスシグマにも現場の改善策を考える手法はいくつかあるのですが、参加者の意見を可視化しながら、短時間でまとめ上げる手法としては視覚会議は有効だと思っています」

一方、高橋さんは「これからは目先のことではなく、先々のことを考えて動かなければならないので、ビジョンなど未来を考える際には視覚会議が向く」と考えています。また、多田さんはナレッジマネジメント活動の更なる活性化を目指して「全国のナレッジマネジメント推進スタッフのありたい姿」で視覚会議を行いたいと考えています。

最後に原さんは「高橋さんや多田さんにどんどん活用事例を増やしてもらいながら、視覚会議をひとつのツールとして社内に紹介していければ」と締めくくりました。

株式会社LIXIL

  • 原 佳之さん(品質・EHS本部 品質保証統括部 シックスシグマ推進部 主幹)
  • 高橋 努さん(キッチン事業部 キッチン戦略推進部 シックスシグマ推進グループ グループリーダー)
  • 多田 浩子さん(情報システム本部 システムインフラ統括部 Information Excellence部 コミュニケーション革新グループ)

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