「センスメイキング」とは

ものごとへの意味づけのことで、ビジネスシーンでは周囲の納得と行動までを包含して言うことが多い。

【センスメイキング:Sensemaking】

組織理論の専門家であるカール・ワイクが1970年代に提唱した概念で、ものごとへの意味づけを行うプロセスを指します。

特に近年は単なる意味づけではなく、周囲にとって納得感があり、行動につながるような意味づけが求められています。

なぜなら、現代のような不確実性の高いビジネス環境では「正しい答え」を得ることが極めて難しいからです。従来のように調査や分析に時間をかけても、状況は刻々と変化します。結果が出るころにはすでに情報が陳腐化している可能性がありますし、突発的なトラブルに巻き込まれたり、前提条件がひっくり返ったり、想定外の出来事はいくらでも起こり得ます。

このような状況下では調査や分析といった過去の情報だけに答えを求めても前に進むことはできません。進むべき道は過去ではなく未来に向かっていくものです。その道は自分たちで見出していくほかありません。

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大切なことは正確性よりも納得性

では、どのようにして「道」を見出せば良いのでしょうか?

有名な事例をご紹介しましょう。何十年も前のことです。悪天候の雪山のなかで、ハンガリー偵察部隊は遭難し、進むべき道を完全に見失いました。しかし、ある隊員がポケットに地図があると気づき、これを見て進もうと提案します。メンバーはその提案に賛同し、力を合わせて無事に下山することができました。安全な場所にたどり着いてから、改めて地図を見ると、それはまったく別の山の地図! 不正確な情報ながら、チームの全員が信じて行動したことで、全員の命が救われたのです。

ここから学ぶべきは、組織において一人ひとりが納得して行動することの大切さであり、そのための「意味づけ」の重要性です。

もしも隊員たちが思い思いに行動していたら、どうなったでしょうか。隊列から離れる隊員や、探しに行って巻き込まれる隊員が出たかもしれません。散り散りになれば、生存確率は一気に下がります。訓練された隊員とはいえ、生死を分かつような状況下では強く命令したところで、効果はなかったでしょう。

そんな隊員たちを突き動かしたのは「この地図に従って下山すれば助かる」という思いだけでした。彼らが信じた地図はまったく別のものでしたが、それは大きな問題ではありません。チームがまとまって行動するために必要なことは情報の正確性ではなく、その情報が正しいと信じて行動するための納得感なのです。

不確実な時代に絶対的な正解は存在しません。可能な限りの情報に基づいて「これはこういうものだ」と言い切れるかどうか、魅力的な意味づけになっているかどうか、周りの人を巻き込んでいくだけの納得性があるかどうか、といったことが重要だと言えます。

視覚会議×センスメイキング

組織やチームが進むべき方向性を定めて行動し、折に触れて方向性や行動の妥当性を見直しながら、改善を繰り返していく――これがVUCA時代に求められる姿勢です。

そして、その進むべき方向性や道を見出すために必要なのが「センスメイキング」。雪山の事例では、まったく別の地図に「この山の地図」という意味を与え、地図を信じれば生きて帰れるという納得のストーリーが創出されました。

実は、視覚会議でアウトプットを創るプロセスはセンスメイキングそのものです。「ありたい姿/あるべき姿」とは組織やチームの進むべき方向性や道のこと。その理想像と現実とを照らし合わせて課題や論点を洗い出し、解決策を決めるわけですが、視覚会議はメンバー全員がアウトプット創出のプロセスに関与するため、得られた答えに対する納得感が高く、その後の行動につながりやすいのです。

なお、同じ環境にいても捉え方は人によって異なります。組織の存在意義は「解釈の多義性を減らし、足並みを揃える」ことにありますから、多様な解釈の中から特定のものを選択して意味づけし、周囲に理解・納得してもらい、組織全体での解釈の方向性を揃えていかなければなりません。

そのため、センスメイキングの効果を最大化するためには組織としてどのような「意味づけ」をなすべきか、組織としての「合意形成」が必要不可欠だと言えます。